あらすじ

遺体のない殺人事件――。 現場には大量の血痕と争った痕跡だけが残り、被害者は跡形もなく消えていた。 刑事・榊真司は、その不可解な事件を追う中で、さらに異様な事実に直面する。被害者の存在そのものが、周囲の人間の記憶から消え始めていたのだ。家族も、友人も、職場の同僚さえも「そんな人物は知らない」と口を揃える。 捜査を進めるほどに、証拠は消え、記録は改ざんされ、事件そのものが“なかったこと”にされていく。やがて榊は、複数の失踪が半径数キロ圏内で発生していることに気づき、その中心にある廃病院へと辿り着く。 そこで彼が目にしたのは、社会から“消された”人間たちと、人の記憶を操作するという狂気の実験だった。犯人の目的は、存在を「物理的に殺す」のではなく、「記憶から消す」ことで完全に抹消すること。 だが真相に近づいた時、榊自身の記憶にも異変が生じる。過去の記録が失われ、同僚は彼を認識できなくなり、自分が何を追っているのかさえ曖昧になっていく。 ――そして明らかになる衝撃の事実。 榊自身もまた、すでに“消去対象”だった。 それでも刑事として真実を追い続ける榊。しかし最後に待っていたのは、犯人の死でも事件の解決でもない。 誰にも覚えられていない世界で、存在ごと消えていく自分自身だった。 正義も、真実も、記憶も――すべてが消える。 これは、「人がいなくなる」のではなく、「人がいなかったことになる」恐怖の物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/04/20
  • 現在の作品消去対象(イレイサー)