あらすじ
深夜二時。
赤ん坊の泣き声で何度も起き、抱き上げて、揺れて、また泣かれる。
終わりの見えない夜の中で、菜月は少しずつ、自分が母親ではなく「泣き声に反応する装置」みたいだと感じはじめる。
眠い。つらい。もう朝までが遠すぎる。
それでも、泣くたびに抱いた。何度でも、お尻をぽんぽんした。
完璧じゃなくても、やさしい声を出せなくても、この手だけは一度もこの子をひとりにしなかった。
そして二十二年後。
大学の卒業式で、成長した息子の姿を見た菜月は、あの終わらないように思えた夜の先に、たしかに今日がつながっていたことを知る。
眠れない夜を越えてきたすべての人へ。
母であることの孤独と愛を、静かにすくい上げる物語。