あらすじ
樹海の奥深く、水球の中で眠っていたアシェリーテアは、二十数年の時を経て覚醒に至った。
意思を持つ杖と共に、約束を果たすべく極寒のシャラントワ大陸辺境に位置するストゥーヴァ村へ向かう。
物語は、まだ五歳だったファナエラを凶悪な魔獣から救ったところまで遡って始まる。
彼女はアシェリーテアから別れ際に、予言ともいうべき特別な言霊を受け取っていた。
そして現在、ファナエラは二人の娘を育てる母親となっていた。
下の娘が五歳の誕生日を迎える夜、予言どおりに言霊が継承された。
約束は果たされた。二度目の邂逅は、物語を思いがけない方向へと誘っていく。
かねてより娘たちに目をつけていた魔獣が、魔力の目覚めをきっかけに襲来したのだ。
迎え撃つアシェリーテアは、圧倒的魔術をもってこれを殲滅する。
彼女しか扱えない、彼女しか覚えていないであろう滅びの言霊をもって。
母から娘へと継承は、滞りなく行われた。そう思われた。
だが、予想外の事態を招くに至り、娘たちは選択を強いられることとなる。
魔力に目覚めた者には、魔法士へと至る道が開ける。
それは茨の道であり、高い壁がそびえ立つ。
なれたとしても、待っているのは国家の犬となるか、無法者となるかの二択だ。
アシェリーテアは過酷な現実に向き合わなければならないことを説き、魔力のことなど忘れて、母と一緒に村で平穏に暮らすことを勧める。
それでも娘たちは茨の道を選び、まさに目の前にいる最高の魔法使いに弟子入りを望む。
アシェリーテアは娘たちを突き放しながら、揺れ動く母娘の葛藤に静かに向き合わざるを得なくなった。
アシェリーテアには何をおいてもやるべきことがあった。
二つの目的を果たさなければならない。
だからこそ、終わりなき悠久の旅を続けている。
母娘にもたった一つの目的があった。
お互いが譲れない中で、アシェリーテアと母娘の道が交わることはあるのか。
これが新たな旅の幕開けだった。