あらすじ
現代にダンジョンのようなものができ、魔物が溢れ、魔法が使えるようになった世界。
特権階級の家に生まれた天才少年・九条迅(16歳)は、全てが思い通りになる毎日に絶望的な退屈を感じて家出する。
「俺はトップには立たない。昔読んだ漫画みたいに、最強のボスの背中を守る『右腕』こそが一番カッコいいからだ!」
そんな中二病全開の偏った美学を持つ迅は、理想のナンバーツーになるため、ある男を自分のボスに選んだ。
無口で、巨体で、顔に恐ろしい傷がある男・黒田(22歳)。さらに迅の眼には、その男から**「世界を滅ぼすレベルの規格外な魔力」**がダダ漏れになっているのが見えていた。
迅は彼を「底知れない最強の器」と勝手に崇拝し、最高の右腕として働き始めた。
ボスが黙っていれば「あえて語らず背中で見せるカリスマ」と解釈し、異常な魔力が漏れて震えていれば「強敵を前にした武者震いと、抑えきれない覇気」と翻訳。
魔法を一切使わないのも「ボスが魔法を使えば街ごと消し飛ぶ。だから俺に華を持たせてくれてるんだ」と超解釈。
迅はボスの名の下に、持ち前の雷魔法で敵対組織を次々と単独で壊滅させていく。
「うちのボスの首を狙うには、百年早いぜ」
迅の完璧すぎる(漫画基準の)「右腕ムーブ」と、ボスから放たれる常軌を逸した魔力のプレッシャーにより、ボスの悪名は裏社会に轟き渡る。そのカリスマ性に惹かれた狂犬のような不良や殺し屋たちが次々と傘下に入り、気づけば50人を超える武闘派凶悪組織『黒王会』が誕生してしまった。
しかし、組織が頂点に達しようとしたその時、迅は見てしまう。
誰もいない部屋で、ボスの黒田が「もうヤダ怖い……実家に帰りたい……」と泣きながら震えている姿を。
無口なのはコミュ障だから。震えていたのはただの恐怖。顔の傷は、昔自転車で溝に転んだ時のもの。
そして極めつけは——魔力量が異常なだけで、魔法の使い方は1ミリも知らない(ただ魔力が漏れ続けているだけ)という事実。
——そう、このボス、ただ見た目と魔力がイカツいだけの「完全なるクソ雑魚一般人(元フリーター)」だったのである!
(嘘だろ……!? 俺が祭り上げてきた最強のボスが、ただのビビリ!?)
待て、下にいる100人のイカれた部下たちは『最強のボスの異常な魔力』に恐れおののいて従ってるんだぞ! もしこの神輿がただのハリボテだとバレたら、組織は一瞬で崩壊する……!!
「……面白ぇじゃねえか」
漫画の読みすぎで作った自らの美学のせいで退路を断ってしまった迅だったが、この「絶対にバレてはいけない無理ゲー」こそ、退屈を紛らわす最高のエンターテインメントだと笑う。
100人の凶悪な部下たちを騙し通し、泣き虫なボスの威厳(ハリボテ)を死守するため、最強の雷使いは今日も完璧な「右腕」を演じ続ける!
絶対絶命の勘違いアンジャッシュ・アクション・コメディ、開幕!