あらすじ
三十三歳の宮廷宝飾台帳官クラリス・ノイマンは、王宮の祝冠式に使われる宝石と刻印の記録を十二年守ってきた。だが華やかな二十六歳の従妹セリーヌと三十六歳の婚約者レナードに婚約も王宮宝飾の座も奪われたうえ、『安物の石がお似合いね』と侮られ、祝冠石のすり替えまで押しつけられてしまう。左遷先は、王都へ宝石を納めてきた北方研磨工房。しかしそこでは原石が曇り、研磨師の賃金が消え、王宮へ送ったはずの星彩石まで偽物に替えられていた。亡き母が残した刻印見本帳、星形の隠し刻印、古い工房金庫、そして裏帳簿。無骨だが誠実な三十八歳のディートハルト公爵と北方工房を立て直しながら、クラリスは『本物の令嬢』を装う従妹の嘘と王宮宝飾局の不正を暴いていく。もう私は、誰かを飾るための控えの宝石係ではない。大人の宝飾台帳官が自分の輝きと居場所を取り戻す、お仕事逆転溺愛譚。