あらすじ
三十一歳の宮廷衣装台帳官イリス・ヘルツォークは、春祈祭の礼装管理を一手に担ってきた。けれど華やかな義妹セレナと三十五歳の婚約者ルシアンに舞台も婚約も奪われ、「地味なドレスがお似合い」と嘲られたあげく、祭礼衣装の生地をすり替えた犯人に仕立て上げられてしまう。左遷先は、王都へ献上する高級織物を作っていた北方織房。だがそこでは織機が止まり、職人の賃金が消え、王都へ送ったはずの青銀糸まで行方不明になっていた。手元に残ったのは、亡き母が遺した刺繍見本帳と、自分だけが読める衣装台帳の癖。縫い代に隠れた織印、欠けた見本帳の一頁、偽りの家紋、王都衣装局の裏帳簿。追放先で無愛想な北方侯爵クラウスと古い機織り場を立て直しながら、イリスは『本物の令嬢』を演じる義妹の嘘と、王都の祭礼を食い物にする不正の糸を一本ずつほどいていく。もう灰色の控えドレスは着ない。大人の衣装台帳官が自分の色と居場所を取り戻す、お仕事逆転溺愛譚。