あらすじ
現代の東京。表向きは寂れた骨董店「黄昏堂」で働く22歳の主人公・結衣(ゆい)は、物に宿る記憶と悪意を視て、それを解体・修復する異能を持つ「呪具修復師」である。彼女はかつて理不尽な呪いによって家族と日常を奪われた過去を持つが、決して悲劇のヒロインにはならず、自らの足で生き抜くために修復の技術を血の滲むような努力で磨き上げてきた。「呪いとは怪異ではなく、人の強すぎる想いが引き起こしたエラーである」という現実主義的なスタンスを取り、どんな恐ろしい怪異を前にしても、あくまでプロの仕事として冷静に事態を収拾していく。
ある日、結衣のもとに持ち込まれたのは、厳重に封印された白磁の壺。その中から現れたのは、かつて帝都を震撼させ、数百年封じられていた強大な妖狐・白夜(びゃくや)だった。白夜は尊大で人間を見下しているが、結衣は彼を「やっかいな不法投棄物」扱いし、全く動じない。白夜は結衣の強靭な精神力と、決して運命に流されない生き様に興味を持ち、二人は半ば強制的に「呪い解体」のバディを組むこととなる。
その頃、街では「願いを叶えるアンティーク」が出回るという都市伝説が囁かれていた。しかしその正体は、人々の欲望を喰らい、最終的に持ち主の精神を破壊する悪質な呪具であった。被害が拡大する中、結衣と白夜は事件の裏に、かつて白夜を封じ、そして結衣の家族の運命を狂わせた呪術師の血脈が絡んでいることを突き止める。彼らの目的は、現代の都市機能そのものを巨大な呪いのシステムへと作り変えることだった。
圧倒的な力を持つ黒幕に対し、結衣には直接的な戦闘能力はない。しかし、彼女には修復師として培ってきた膨大な知識と、呪いの仕組みを論理的に解体する思考力、そして何より「自分の運命は自分で決める」という確固たる意志があった。白夜の絶大な妖力と結衣の緻密な修復技術、そして二人の間に芽生えた種族を超えた対等な信頼が交差したとき、かつてない逆転劇が幕を開ける。
本作は、理不尽な運命に直面しても決して屈せず、自らの仕事と誇りを持って立ち向かう女性の姿を描く現代あやかしファンタジーである。恋愛要素をエッセンスとして含みつつも、自立したプロフェッショナルとしてのヒロイン像を提示し、少年漫画のような熱い共闘の興奮を併せ持つ。時代を先取りする自立したヒロインというレーベルカラーを体現し、ジェンダーや年齢を問わず、読者にカタルシスと明日を生きる活力を提供するエンターテインメント作品である。