あらすじ
三十歳の郵便監査官エルマ・シュタールは、王都郵便監査局で「本当に届いたか」を証明する仕事をしてきた。だが婚礼前夜、三十四歳の婚約者ユリウス・フェルデンと、二十七歳の社交界の寵児セリーヌ・アルヴェに、自分の告発書も私信も暖炉で燃やされているのを目撃する。翌朝には急使便紛失の責任を着せられ、婚約も職も奪われてしまった。そんな彼女へ手を差し伸べたのは、三十八歳の無口な辺境侯レオンハルト・ヴァインベルク。北辺で消える嘆願書や年金申請書を洗い直すため、彼はエルマを文書庫へ迎える。届かなかった寡婦の手紙、偽造された配達印、隠された婚礼通知。配達記録を追うほど、元婚約者たちの不正は一本の線につながっていく。毎朝いちばん先に届くのは、無口な辺境侯からの短い手紙。大人の郵便監査官が、自分の名前と幸せを取り戻す逆転溺愛譚。