あらすじ
深夜2時。
蛍光灯の白い光だけが残るコンビニで、相川恒一は無言でレジに立っている。
大学を中退してから半年。
理由を聞かれることもなく、語ることもなく、ただ夜をやり過ごすだけの生活。
廃棄のパン、温め直されたコーヒー、同じ顔の客。
何も起こらないことだけを望んでいるような、静かな時間。
——そこに、彼女は現れた。
新しく入ったアルバイト、渦間日向。
年齢不詳の履歴書、やけに慣れた手つき、場に溶け込む速さ。
笑顔は柔らかいのに、どこか距離がある。
「夜、好きなんですか?」
何気ない一言に、恒一は答えない。
ただ、ほんのわずかに視線を向ける。
その瞬間、違和感が残る。
——この人は、何かを隠している。
理由はわからない。
証拠もない。
それでも、そう感じてしまう。
そして日向もまた、気づいている。
——この人は、見ている。
何を、とは言わない。
ただ、他人よりほんの少しだけ深く。
二人は、何も知らないふりをして、同じ夜に立ち続ける。