あらすじ

影武者の妹はもういらない

それは 姉のものです
そう言えば すべては丸く収まった

ドレスも
言葉も
与えられる役目さえも

私は 空っぽの器でよかった
満たされるのは いつだって他人の名前だったから

 

泥の中に捨てられた夜
初めて思った

——それでも 私は生きている

 

剣を向けた男がいた
冷たい瞳の奥で
なぜか 私を見ていた

「なぜ逃げない」

答えは 簡単だった
それしか 知らなかったから

「この人が 死ぬからです」

 

その瞬間
世界が 私を呼んだ気がした

「……やっと見つけた」

誰の代わりでもない声で
私を呼ぶ人が いた

 

それは 姉のものです
そう言おうとして

言えなかった

 

初めて与えられた部屋は
静かで
怖かった

これは 誰のものでもない
——お前のものだ

そんな言葉は
私の中に 居場所を作るから

 

笑われた日
砕けたのは 心じゃなかった

光だった

閉じ込めていたものが
溢れて 世界を満たした

 

奪われる側だったはずの私に
誰かが跪いた

選ばれるということを
初めて 知った

 

「あなたが 怖かった」

崩れていく声に
私は もう震えなかった

 

影は もういらない

 

私は 誰かの代わりじゃない
誰かのための名前でもない

 

それでも もし呼ぶなら

 

——エルゼと

 

それが 私の
最初で最後の
ほんとうの名前

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アルファポリス
アルファポリス2026/04/20
  • 現在の作品『影武者の妹はもういらない』