あらすじ
三十一歳の通商監査官エレナ・ヴァイスは、王都の港湾局で不正を潰し続けてきた。だが夫である航路局次官ギデオンに政略離婚を言い渡され、その席は二十八歳の愛人リディアに奪われてしまう。追い出されるように赴任した北の辺境港ノルトエルトで彼女を待っていたのは、空の倉庫、穴だらけの台帳、そして三十九歳の冷徹提督アーベル・クラウスだった。関税、係船料、倉庫鍵、偽造印章。帳簿と印璽だけを武器に港の腐敗を暴くうち、王都へ伸びた密輸線はやがて元夫と愛人の足元までつながっていく。もう都合のいい妻にも便利な監査官にも戻らない。潮風と監査印から始まる、大人の辺境やり直し譚。