あらすじ
感情の揺れは観測され、必要に応じて補正される。
悲しみも不安も怒りも、社会の安定を保つために整えられる世界。
感情安定管理局で働く安曇零は、ある日、長期経過観察対象である小海結衣の記録に違和感を覚える。
数値上は安定している。再補正の必要も低い。
それでも彼女の感情だけは、なぜか既存の分類モデルに収まりきらない。
静かなラウンジの窓辺で出会った結衣は、零の中にある“なくしたもの”へ、ためらいなく触れてくる。
かつて恋人を失い、その細部の記憶だけを曖昧に閉ざしてきた零は、やがて自分自身の過去と、この世界の真相にたどり着く。