あらすじ

千一回目の『今回だけは許して』。いいえ、私の帳簿はもう満欄です。

あなたが病弱な妹に注いだ我が家の資産、一リリス残らず返還請求いたしますわ

千一回目の
「今回だけは許して」

その言葉は、
雨のように軽く、
けれど乾くことのない湿りを残して
私の時間に降り積もっておりました

最初の一度は、信じておりました
二度目は、仕方がないと
三度、四度と重なるうちに
それは約束ではなく
習慣へと変わっていったのです

あなたは覚えていないのでしょう
どの夜を空席にしたのか
どの贈り物を誰の手に渡したのか
どの言葉を、誰のために選び
誰を後回しにしたのか

だから私は、書き留めました

日付を
金額を
理由を
そして——失われたものを

帳簿は静かです
責めることも、嘆くこともなく
ただ、正確に積み上がっていく

あなたの優しさの行き先が
いつも同じであったことも
あなたの言う「今回だけ」が
決して一度ではなかったことも

すべて、そこにございます

あの子はいつも、か弱く笑っておりましたね
触れれば壊れそうな声で
けれどその指先は
金貨の重みをよく知っていた

あなたはそれを愛と呼びましたが
私の帳簿では、別の名で記されております

——流用
——優先
——不履行

数字は嘘をつきません

そしてついに
千一回目の「今回だけ」が
私の頁を埋め尽くしました

もう、余白はございません

ですから申し上げます

いいえ、と

これは怒りではなく
恨みでもございません

ただの、精算でございます

あなたが差し出した言葉の分だけ
あなたが奪った時間の分だけ
あなたが他者に注いだ資産の分だけ

一リリス残らず
お返しいただきますわ

愛という名の曖昧な約束ではなく
確かな数字として

そして帳簿を閉じたあと
私は新しい頁を開きます

そこにはもう
「許した回数」は記しません

代わりに書くのは
私が私のために選び取った日々

温かな茶の香りとともに
静かに積み上がっていく
確かなものだけを

——もう、「今回だけ」は要りません

私の時間は
すべて、私のものですから

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アルファポリス
アルファポリス2026/04/19
  • 現在の作品千一回目の『今回だけは許して』。いいえ、私の帳簿はもう満欄です。あなたが病弱な妹に注いだ我が家の資産、一リリス残らず返還請求いたしますわ