あらすじ

鍛冶屋から一歩も出ないまま、国を救ってしまう男がいる。 辺境ヴァルムーア王国の片隅に、ある日ひとつの小さな鍛冶屋が開いた。 店先の看板には、こう書かれている—— 「炉は問わない。お前が何者かを。」 店主の名はアルダー。 寡黙で、愛想もなく、自分の身の上を語ることもない。 ただ頼まれた物を、頼まれた通りに、黙って打つだけの男。 その店を訪れるのは、どこか訳ありの客ばかり。 素性の知れぬ、風のような若者。 酒に身を沈めた、老いた騎士。 怯えた瞳の、人目を避ける少女。 やけに陽気な、流れ者の旅人。 料理大好き、巨漢のオーク—— 彼らが置いていくのは、どれもささやかな、他愛のない注文ばかり。 だが、そのひとつひとつが—— いま王国の裏で静かに進む幾つもの陰謀を、 誰にも気づかれぬまま、少しずつ解いていく。 アルダーは、店を出ない。 客の身の上を詮索することも、世の中の噂に口を挟むこともない。 ただ炉に火を入れ、鉄を打ち、求められた物を渡すだけ。 これは—— 槌の音だけが絶えない辺境の小さな鍛冶場を舞台に、 訪れる客たちの語りを通して、少しずつ姿をあらわしていく、 ひとつの国の危機と、その救いの、静かな年代記。 炉は今日も、何も知らぬ顔で燃えている。

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小説を読もう2026/04/19
  • 現在の作品鍛冶屋から一歩も出ていないのに、気づいたら国を救っていた件 〜鍛冶屋アルダーの年代記〜