あらすじ
自由気ままな猫神様は、いつも突然ふらりと姿を現す。
人間たちの『幸福の匂い』を糧に、今日も今日とて街を闊歩しているのだ。
その気まぐれな一歩が、誰かの人生をそっと揺らす。出会い、別れ、そして小さな奇跡の数々。
そんな猫神がある日訪れたのは、一人の青年画家の家。
コンテストに落選し続けていた青年は、筆を折ろうとしているところだった。だが一枚だけ、かつての情熱が残されている絵が転がっている。その上で猫神は、青年に「吾輩を描いてみろ」と促す。自由に描いたその絵には、昔の情熱が戻りつつあった。そしてコンテストで佳作を収め、青年は再び前を向き出す。
幸福の匂いを頂戴した猫神は、気ままにふらりと青年の前から姿を消した。
二人目はずっと昔、大正時代の話。
妻と飼い猫に先立たれたマサフミは、孤独に庭の枯木を眺めていた。近寄った猫神を竹ぼうきで追い払うが、次第に猫神に心を開いていく。
ともに過ごし、枯木は妻が大事に育てていた椿の木だと知った猫神。
蕾がつき、花開いたとき、マサフミは満足したように永遠の眠りにつく。
猫神は人間の儚い最後を見届け、また街に繰り出す。
これは猫神様と人間たちが織りなす、優しくも切ない物語。