あらすじ
「ちょっと貧血がひどいだけ。すぐ良くなるよ」
恋人になったばかりの冴姫(さき)がついた嘘を、俺は信じていた。
点滴が外れたら、また二人でどこへ行こうか。そんな呑気な未来ばかりを夢見ていた。
だが、現実は俺たちの希望を嘲笑う。
冴姫を蝕む白血病。急激な病状の悪化。
もはや一刻の猶予も許されない状況で、共通の親友である真凛(まりん)は、ある「選択」を迫られていた。
競泳の特待生として、自らの人生を左右する最も重要な大会。
そのスタート台に立つか。それとも、ドナーとして病室に残り、親友の命を繋ぐか。
「大会が終わったら、すぐに移植するから。冴姫は助かるから」
そう自分に言い聞かせ、両方を守ろうと必死に足掻いた真凛。
けれど、無情なカウントダウンはそれを許さなかった。
親友の命という、たった一つの「夢」を救うために。
真凛は、自分が人生を捧げてきた水泳選手としての輝かしい未来を、その手から零し落とした。
これは、美しすぎる夢と冷徹な現実の狭間で、
愛と犠牲の重さに押し潰されながらも、必死に手を繋ぎ続けた三人の記録。
登場人物紹介
■ 白瀬 冴姫(しらせ さき)
教育学部に通う大学二年生。主人公の恋人で、おっとりとした優しい性格。
将来の夢は学校の先生になること。大学入学時に急性白血病を発症したが、愛する主人公を悲しませたくない一心で、「ただの貧血」だと嘘をつき通している。
眠りの中でだけ、主人公と色々な場所をデートする「夢」を見ている。
■ 桜城 真凛(さくらぎ まりん)
スポーツ科学学部に所属する競泳特待生。主人公と冴姫の幼馴染。
素直になれない性格で主人公には素っ気なく振る舞うが、実は幼い頃から彼に恋心を抱いている。
冴姫のドナーになれる唯一の存在だが、ドナー提供後「一か月の運動制限」それは必死で掴んだ「特待生」として大切な大会の棄権し自分の夢と恋を支えてきた「水泳」を捨てることを意味していた。
■ 浜崎 優(主人公)
冴姫の恋人で、真凛とは気心の知れた幼馴染。
冴姫と恋人になれた幸せの絶頂にいたが、彼女の「嘘」を信じ込んだまま、残酷な運命の渦に巻き込まれていく。何も知らぬまま、二人の少女の「決断」の先に立たされることになる。