あらすじ
2120年代。東京都の24番目の区、「湾央特区」。東京湾の海底から噴き出す海流を利用した発電で成り立つエコロジーアイランド。その電力がトウキョウの街を動かし、暗号通貨Bay Coinを生み出していた。
海底では命懸けで海流を捕まえ、タービンを回す潜水士たちがいた——通称モグリ。
元電化技師のサビはモグリや裏パーツの運び屋として食い繋いでいた。
ある日、地下の研究所から妊娠中の暗号通貨研究者が逃げ出した。同時にBay Coinのセキュリティキーが消失。湾央区は全域を封鎖した。
モグリの仕事が機械化されると宣言されたころ、サビは運びの仕事で一枚のメモとカードを手に入れる。Bay Coinのセキュリティキーだった。
俺たちの首を切ろうとしている奴の弱みを握っている。サビは殴り返すことを決めた。
世界経済の崩壊を企む暗号研究者。実験体にされた電撃の女あやめ。全てを掌握しようとする車椅子の区長・新堂。湾央特区の最深部でそれぞれの運命が交錯する。
用語集
湾央特区(わんおうとっく) — 東京湾に造成された人工島。東京都24番目の特別行政区。海底発電所「わたつみ」と暗号通貨Bay Coinの経済圏で成り立つ。
わたつみ — 海底の地熱裂け目を利用した発電所。三層構造。モグリたちは裂け目の海流を「海神の呼吸」と呼ぶ。
モグリ — 海底で発電作業を行う潜水士の通称。海流を捕まえタービンを回す。オレンジのツナギが目印。
電者(でんしゃ) — 体の一部を電化パーツに置き換えた人間の総称。電化率による暗黙の序列がある。
ガラ — 低質なパーツや他者から剥ぎ取ったパーツで電化した者。電者の最底辺を指す蔑称。
電者狩り — ガラが他の電者からパーツを奪う行為。下層で横行している。
電者法 — 電化施術に関する法律。認可パーツ・免許制の技師による施術のみが合法。
BYC(Bay Coin) — わたつみの発電力を裏付けとした暗号通貨。七〇万枚の限定発行。世界経済に組み込まれている。