あらすじ
勇者に選ばれたその日、
俺は“何かが足りない”ことに気づいた。
王都アレスト。
剣と祈りで成り立つその国で、俺は勇者として選ばれる。
だがその直後から、奇妙な違和感が残り続ける。
誰かがいたはずの記憶が曖昧になる。
存在していたはずの“何か”だけが、世界から削り取られている。
そして俺のそばにいる時だけ、聖女リゼリアは“人間らしく”なっていく。
――君といると、私は少しだけ“ある”気がします。
だが同時に、彼女は言った。
――怖いです。あなたの近くにいると。
俺の剣は届かないはずの距離に届き、
選ばれなかったはずの結果を“成立させてしまう”。
それは魔法ではない。
祈りに近い、歪んだ奇跡だった。
守るたびに、何かが削れていく。
選ぶたびに、世界が静かに歪んでいく。
これは、
一人を守るために、世界そのものを間違えていく物語。