あらすじ
拝啓――私を無能と断じ、パーティから追放した皆様へ。
お元気でしょうか。
いえ、最近の状況を見る限り、そうでもないのかもしれませんね。
まずはご報告いたします。
復讐はすでに終わりました。
もっとも――私は何もしていないのですが。
王都であなた方に追放された後、私は辺境の町で静かに暮らしておりました。
戦うこともなく、名声を求めることもなく、ただ穏やかな日々を過ごしていただけです。
ですがその頃から、あなた方の周囲では少しずつ“問題”が起き始めていたようですね。
前衛の負傷、魔術の暴発、取引の破綻、そしてパーティの崩壊。
どれも些細な不運や偶然の積み重ね。
そう言ってしまえば、それまでの出来事です。
ですが――本当にそうでしょうか。
かつて私は、あなた方の行動や判断に対して、ほんの少しだけ口を挟んでいました。
無謀な突撃を止め、わずかな術式のズレを修正し、契約の穴を埋める。
それらは目立つものではなく、評価されることもありませんでした。
だからこそ、不要だと思われたのでしょう。
けれど、それらが“なかった場合”に何が起きるのか。
今回の件で、皆様も理解されたのではないでしょうか。
繰り返しますが、私は何もしておりません。
ただ、そこにいなくなっただけです。
これは、何もしていないはずの一人の追放者が、結果としてすべてを崩壊させてしまった物語。
――どうか最後まで、お読みいただければ幸いです。