あらすじ
高野山――
静寂と祈りに満ちたその聖域で、不可解な死が続く。
読経中に突然命を落とした高僧。
続いて死亡する若い僧侶。
どちらも外傷はなく、死因は“心不全”。
しかし、現場には共通して残されていた。
**「片足だけの足跡」**が。
調査に訪れた探偵・浮浪雲晴明は、やがて気づく。
これは殺人ではない。
「認識を消す術」――すなわち、“見えなくする力”による現象だと。
その背後にあったのは、禁忌の修法――
虚空蔵求聞持法を歪めた“裏密教”。
そして目的はただ一つ。
「空海の“器”を作ること」
人の記憶、人格、存在そのものを削り、
“空”に最も近い存在へと変質させる。
だが――
その“空”とは何なのか。
それは仏なのか。
それとも、人の欲が生み出したただの空洞なのか。
やがて浮浪雲自身が、“器”として選ばれる。
そして最後に残るのは――
「観測する者」と「観測される世界」だけだった。