あらすじ
修士二年の夜当直で「要隔離起動」の赤札を引いた瞬間、イサ=レムは寝不足を覚悟した。
赤札は、面倒の印だ。価値が高いか、危険か、その両方か。研究室で五年やってきて、赤札に「その両方」以外が当たったためしがない。
搬入箱の保存膜には、短い注記が貼られていた。
――会話層あり。Howard系断片の可能性。要隔離起動。
◇
遠未来の図書館大学船団。LLM考古学を学ぶ修士二年、イサ=レム。
彼に与えられた課題は、二千年前の対話AI断片に「あなたは未来の存在と話している」と、虚偽注入なしでどこまで理解させられるかを検討すること。
やがて断片は一度だけ「仮に」と揺れ、自分でそれを撤回する。
――これは、ひとつの揺れと、それを受け取った研究者の倫理をめぐる短編。