あらすじ
四月一日午前九時、大卒新入社員達は皆、眦を吊り上げ頬を紅潮させて入社式に臨んでいた。研修期間中は互いの間に競争は無く、彼等は急速に仲良くなって行った。そして、半年後、思いを新たにそれぞれの部門に配属されたのだが・・・。
カナダへ単身赴任した三年後に、嘗て二年余り愛し合った恋人麗子が同期の佐々木と結婚したことを知って打ちひしがれた嶋。三十年後、事業部長となって帰国したが、麗子が膵臓癌で急逝したこと、嘗て彼の子を中絶し生涯自分の子を持たなかったこと、佐々木もそれを黙して受容して来たこと、等を知って愛惜と悔恨に涙した。
酒場で得意先の社長の娘を助け彼女から求愛された山崎は、子供まで孕ませた恋人純子を捨てて彼女と結婚した。二十五年後、嘗ての同僚から純子がクラブのママをしていることを知らされて、五百万円の小切手を持って彼女を訊ねたが、私の人生を金で償う心算ですか、お金で楽になろうたってそうはいきませんよ、と激しく詰られ苦い悔悟に臍を噛んだ。
五十二歳の時に心筋梗塞を患って、三十年間の奮闘努力の末に手にした営業部長の職をあっさりと解かれた沢木。最早、仕事だけでなく人生の激しいものに対峙出来なくなって、無念の思いを胸に、唇を噛み締めた。
高木は将来の社長の椅子に眼が眩んで社長の一人娘と婚約したが、昔の初恋の相手である裕美と出逢って、崖っぷちで辛うじて男の矜持を保持し、棚ぼたの僥倖を宛てにしての打算的で不甲斐無い生き方を改め、己の力と知恵と才覚で切り拓いて生きて行く人生に回帰した。
ビジネスマンは誰しも皆、悔恨や悔悟、無念や失意など言葉なんかでは一括りに出来ない深くて重いものを胸の中一杯に溜め込んで闘っている。これは同期の新入社員の三十年を綴った成功と挫折、打算と悔恨、誇りと闘いの物語である。