あらすじ
①あらすじ
鐘と運河と古い工房が残る港町セラド。教会跡の裏手にある修繕屋兼共同住宅「鳩目荘」で暮らす十人は、家賃滞納と納税期限に追われ、賞金三十万リルを狙って町の名物催し「ダメ人間コンテスト」へ出場する。ところが本番の最中、古い伝書鳩型のからくり鳩が暴走し、舞台の鐘楼模型がドンガラガッシャンと大崩壊。その残骸から、修道女セファが遺した真鍮筒と古地図が見つかる。
地図が示していたのは、誰も近づかない「明け方の教会」。そこに眠っていたのは、金銀財宝ではなく、旧市街へ光と熱と手紙を届けるはずだった送電網「虹色の夢」と、言えなかった気持ちを声と息遣いごと残す仕組み「音の音」だった。賞金目当てで走り出した十人は、役場会計長ヴォルダ一派に追われながら、港町、製糖村、宿駅、修道院、地下水路を駆け抜け、やがて町そのものを立て直す戦いへ踏み込んでいく。
失敗ばかりで、口げんかばかりで、みっともない。それでも誰かの朝を少しでも楽にしたいと願う人たちが、不格好なまま手をつなぎ直していく群像ハートフルファンタジーです。物語の終わりに残るのは、派手な勝利ではなく、次の朝も鍋に火を入れ、人の話を聞き、鳩を飛ばして生きていこうとする確かなぬくもりです。
②登場人物の紹介
メシンビ
鳩目荘のまとめ役。人の気持ちを言葉にするのは得意だが、自分自身の本音だけは後回しにしがち。六年前の火災の日、言うべきことを言えなかった後悔を抱えている。
ミルナ
鳩目荘の財布を預かる現実派。乾物の戻し方ひとつで夕食を増やすような工夫上手で、夢物語には冷たい。亡き父の記録と向き合う中で、止まっていた感情を抱え直していく。
パラシオ
舞台度胸抜群の盛り上げ役。空気が沈めば真っ先に騒ぎ、自分から笑われ役にも飛び込むが、その軽口が人を救うことも傷つけることも知っていく。
クリーンティ
旧市街を駆け回る配達人。観察眼が鋭く、地図や古い印の癖を読むのが得意。真鍮筒の地図が宝探しではなく、暮らしをつなぐ図面だと最初に見抜く。
エウッド
からくり動物の調律師。静かな口調の奥で、声色や息遣いの揺れを敏感に拾う。古い蓄音石や伝書鳩機に残された「音の音」を読み解く鍵になる。
ゲラシモウラ
鳩目荘の台所担当。ありがとうをためらわず、食べ物と匂いから人の記憶を開いていく。逃避行の先々で人と人をつなぐ、大きなやさしさを持つ。
ジョーディン
修理見習い。古い機械を見ると目を輝かせる発明好き。伝書鳩型のからくり鳩「モーラ」を改造し、物語を大きく動かす。
オレシア
腹をくくるのが早い行動隊長。迷う仲間たちの前で道を決め、危険な場面では真っ先に矢面へ立つ。
クラッセン
荷車と力仕事を担う寡黙な守り手。前へ出すぎないが、小さな異変を見逃さず、皆の足場を静かに支える。
グルシャラ
踊り子兼交渉役。場に応じて見せ方を変えるのがうまく、踊りを変装、合図、群衆誘導にまで使いこなす。