あらすじ
【あらすじ】
帝国北端、雪と硝煙が舞う辺境領・ヴォルガ。
そこを治めるアレクセイは、幼少期から剣を握り、返り血で身を清めてきた「鋼の辺境伯」だった。
殺風景な居城、無骨な部下、そして荒んだ民。彼に安らぎなど必要ない――そう思っていた。
そんな彼のもとへ、帝都から一人の花嫁が送り込まれる。
公爵家令嬢、エルナ・フォン・ラインハルト。
「氷の公爵令嬢」と渾名(あだな)され、その冷徹な美貌から誰もが恐れる淑女。
アレクセイは覚悟していた。帝都の華には、この泥臭い辺境は耐えられまいと。冷え切った仮面夫婦としての生活が始まるのだと。
しかし、城の門をくぐった彼女が最初に見せたのは、絶望ではなく、凛とした「完璧」な微笑だった。
埃を被っていた城内は、彼女の指先一つで洗練された空間へと変貌し、
アレクセイの無骨な振る舞いは、彼女の深い知性と献身によって「英雄の風格」へと磨き上げられていく。
そしてアレクセイは気づく。彼女の冷たいはずの指先が、自分の剣だこだらけの掌(てのひら)に触れるとき、そこには確かな「熱」が宿っていることに。
これは、愛を知らない鋼の男が、完璧すぎて眩しい嫁に陥落(お)とされていくまでの、甘く、重厚な物語。
【登場人物紹介】
アレクセイ・イヴァノフ(27)
ヴォルガ辺境伯。鋭い眼光と、数多の戦傷を刻んだ鋼の肉体を持つ。
言葉より先に剣が出る不器用な性格で、自分の価値は「敵を排除すること」にしかないと思い込んでいる。
エルナの完璧な嫁ぶりに戸惑い、心臓が爆発しそうなほど高鳴るたびに「これが帝都の罠か……」と真顔で悩む天然な一面もある。
エルナ・フォン・ラインハルト(19)
「氷の公爵令嬢」と称される、白銀の髪と紫水晶の瞳を持つ絶世の美女。
感情を面に出さないため誤解されやすいが、その実、アレクセイを「幼い頃に自分を救ってくれた英雄」として密かに、かつ深く愛している。
アレクセイを支えるため、家政、外交、礼法すべてを完璧に修めた「理想の嫁」。
夜、寝室で二人きりになると、わずかに耳を赤くして裾を握る癖がある。