あらすじ

聖域侵した罰を

鍵を回した音が
いつもより、ひどく軽かった

整えたはずの空気が
わずかに乱れている

花の香りに混じる
知らない温度

ああ

壊されたのではない
ずれただけだ

だから、戻せばいい

白い寝台に残る
かすかな皺と
消えきらない呼吸

視線を落とす

重なっていた形が
まだ、そこにある

綺麗ね

そう思ってしまった時点で
もう、決まっていた

名前を聞く
位置を確かめる

曖昧なままでは
置けないから

与える手と
受け取る視線

繰り返すうちに
人は馴染む

差し出すことに
受け取ることに

ほんの少しの優しさが
やがて理由になる

理由は、鎖になる

香りが変わる

それだけで
呼吸が乱れる

誰のものだと

知らなくていい

疑いは、結び目になる

見られることで
関係は確定する

言葉にされることで
逃げ道は消える

戻りたいと願う声

けれど

あなたの価値は
もう、そこにしかない

隣にいる、その形

それだけが
あなたを成立させている

壊さない
ほどかない
整えるだけ

閉じたまま
動かないまま

窓の外は静かで
紅茶はちょうどいい温度

遠くで揺れる影が
まだ、もつれている

でも大丈夫

離れない
離れられない

それは罰で

それ以上に

完成

静かに、微笑む

いいわ

誰にも触れられない場所で

ただひとつの関係が
ずっと続いていく


連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/04/18
  • 現在の作品『聖域侵した罰を。 ~腐女子の妻は、夫と愛人を“公式カップル”に固定する~』