あらすじ
「ボクのことなんて、どうでもいいんだ」
そう言って、ハイライトの消えた目で壁ドンしてくるのはやめろ。
面倒になった俺は、こいつの口をキスで塞いだ。黙らせるためだった。それだけのはずだった。
——それが、全部の間違いだった。
クラスメイトのツバメ獣人、イロハ。
ショートカットの黒髪に涼しげな目元。背中の黒い翼に、燕尾服のような長い尻尾。
男子からは「かっこいい」、女子からは「王子様」と呼ばれるクラスの人気者。
——そういうことに、学校ではなっている。
裏では、俺にだけ独占欲をむき出しにしてくる面倒くさい女だ。
休み時間は必ず一緒。昼は必ず一緒。帰りは絶対に一緒。できなければハイライトの消えた目で壁ドンしてきて、「どうしてボク以外と楽しそうにしてたの」とネチネチ詰めてくる。女子だけじゃない。男子相手でも嫉妬してくる。男友達枠も嫉妬の対象らしい。
そんなイロハの嫉妬攻撃を黙らせるため、俺はある日、キスをした。
効果はあった。効きすぎた。
次の日から、イロハは——驚くほど大人しくなった。
これで平和が戻った、と思った。数日後、クラスの男友達にこう言われるまでは。
「やっと付き合ったんだな、お前ら。婚約したって、あいつみんなに言ってたぞ」
——は?
慌てて問い詰めに行こうとしたが、イロハはどこにもいない。
L○NEを送れば、すぐに返ってきた。
『話したいことがあるなら、ボクの家に来てよ』
『今日は、誰もいないからさ💞』
鍵は、開いていた。
イロハの部屋のドアを開けて、その光景に俺は絶句した。
「見ちゃったのなら——もう、帰さないよ💞」