あらすじ
夜間の服飾学校に通う花凛は、課題と締切に追われながらも、服を作ることを諦めきれずにいた。
少しだけスピリチュアルな感受性を持つ彼女は、ある夜、花の香りと鏡の揺らぎに導かれ、眠るたびに異世界フローラ・ミラージュへ渡るようになる。
そこは、大正時代の日本とロココ時代のヨーロッパが溶け合った、花と鏡と装飾の世界。
服や髪飾り、香りや布には祈りと役割が宿り、装うことは生きることそのものだった。
けれど、その世界は美しいだけではない。
華やかな見た目の裏で衛生観念は未発達で、感染症が広がりやすく、現実世界から持ち込まれた毒が静かに街を蝕んでいた。
やがて花凛は、自分と深く結びついた少女レイナ、人格と記憶を揺らす入れ替わり、そして異世界の混乱の背後にいる黒幕の存在を知っていく。
現実ではコンテストに出す一着を。
異世界では誰かを守るための一着を。
風呂のない世界に湯浴み文化を根づかせ、海風の泉を回復の場へ変え、洗いやすい絹を吐く魔法改良蚕の糸に希望を託しながら、花凛は二つの世界の裂け目を針で縫い合わせていく。
これは、服で未来を掴みたい少女が、恋と記憶と災厄のはざまで、
自分の店と帰る場所を探していく物語。