あらすじ
大正十四年。帝都・銀座。
元大蔵省の調査員・鷺沢清一郎は、数字の嘘を暴いて食っていた。
報酬は「嘘がなければ発生しなかった損害額の一割」。
端数まで計算する。丸い数字は嘘をつくから。
ある春の日、速記士・朝比奈柚が転がり込んでくる。
帝都一の耳を持ちながら「女性だから」と行き場をなくした二十二歳。
開口一番——
「言葉の嘘を記録できる人間が、あなたには必要なはずです」
数字を読む男と、言葉を残す女。
二人が小さな依頼を解き続けるうち、
震災の灰の下に埋められた一枚の手形が、静かに顔を上げ始める。
それはやがて、帝都ごと揺るがす密約へと繋がっていく。
記録することは、抵抗することだ。
浪漫を失った男と、諦め方を知らない女が、帝都の嘘を暴く大正浪漫ミステリー。