あらすじ
⓵あらすじ
王都レウコメリアでは、正式な訴えを届けるにも「蒼い名札」が要る。請願審理局西棟の監察官補エフティミアは、昼には書類の綻びも印章の癖も見逃さず、人々から「氷の名札官」と遠巻きにされていた。けれど夜になると黒い外套をまとい、窓口から零れた声を拾う“悪女”として動き出す。蒼い名札を持てない母子、消えた子どもたち、鉱山街で帳消しにされた記録。十二年前に潰された救済制度「危難報官」をたどるうち、彼女は王都と鉱山街を繋ぐ腐敗へ迫っていく。
その裏の顔に気づきながら、問い詰めず、見えない場所で道だけを整え続けるのが、無口な護衛アロイシウス。喉飴を置き、危ない石をどけ、熱の夜には湯を冷ます。言葉より先に行動で寄り添う彼とともに、エフティミアは救われないはずだった名を結び直していく。これは、昼は厳しく夜は人を救うヒロインと、優しさを隠す護衛が紡ぐ、異世界恋愛譚。
②登場人物
エフティミア
請願審理局西棟の監察官補。昼は差し戻しを恐れず、書式の乱れも数字の綻びも容赦なく見抜く。夜は黒い外套と面紗をまとい、窓口から零れた声を拾って走る。
アロイシウス
王城外縁から回された護衛。石、香り、足跡から来歴を読み、エフティミアの裏の顔を見抜いても告げ口せず、必要なところだけ黙って支える。
シリアナ
香彩堂《胡蝶の夢》の店主。香りで変装を支え、夜に集まる訴えの受け皿を整える、エフティミアの頼れる協力者。