あらすじ
超常の存在が普遍的であるこの世界。
祈りと対価で恵みを与える神や天使、欲望に従い命をも喰らう悪魔。齢10歳を迎えると異能が発現し、その力を以てして現世を統べる“人間”……
そんな世界で神に近い家柄に生まれた人間の少年、アグノスは、宣告の刻を迎えても異能が発現しなかった。つい先日までは神の使いだ、救いの神童だとありがたがっていた家からも次第に迫害を受けるようになり、過剰なまでに「正しさ」だけを教わってきた彼は人の輪にも馴染めず孤立していく。
しまいには自分の信じていたものすら純粋な悪意に踏み躙られた――そんなある日。通い慣れた帰路の途中にある古ぼけた書店が目に入り、柄にもなく寄り道をした……
この行動で彼の運命は大きく変わることになる。杜撰な管理が祟ったか、埃を被った本の海の底に地獄より血の契約を目的とする書物が一冊、紛れ込んでしまっていたのだ。幸か不幸か、アグノスはこの日それを手に取ってしまい悪魔が囁く。
「おま…しろいな。迎してやる……ゲヘナに来るといい。約…方法は……えの血を背表紙に…」
その内容は……契約者のゲヘナ転移。
これは理解が追いつかぬまま悪魔たちの世界に堕ちたとある少年が、戦いに身を投じ、幾つもの苦境を乗り越えながら己の道を選び取り、自らの意思で歩んでいく。そんな物語である。