あらすじ

戦いは、23年前に終わっていた。 不老の機械化身体を与えられた元・英雄は、瓦礫の残る家で、朝の整備工程を11の順番で踏む。5番目と6番目を、今日は逆にやった。逆にやったことに、気づかなかった。 娘は、地下の施設で、父の身体のログを同期する。小指の遅延は、1秒、2秒、3秒と、日ごとに大きくなる。数字を見ながら、娘は「記録欠落フラグ」の項目にチェックを入れる。その動作が、日課になっている。 父のデータを売って地位を得た旧友は、毎朝、意識的に工程の順番を乱す。正確にやると、娘と同じ身体の動作になる。ならないように、崩す。崩した結果が、父の工程の数に一致する。 3日後、3人は同じ部屋に集まる。スキャン機器の、低い待機音のなかで、それぞれの照合が、起動しないまま閉じていく。 静かに壊れていく3つの身体の、沈黙の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/04/17
  • 現在の作品【SF(文学寄り)】保留──英雄だった男の、壊れ方についての記録