あらすじ
王都でも指折りの名門、ローゼンベルク公爵家の大広間に、重苦しい空気が満ちていた。磨き上げられた床に反射するシャンデリアの光はいつもと変わらぬはずなのに、その場に集う貴族たちの視線はどこか好奇と期待に満ちていて、まるで見世物を待つ観客のようだった。
その中心に立たされているのは、ひとりの令嬢。
栗色の髪はきっちりと後ろで束ねられ、華やかさとは程遠い質素なドレス。顔立ちは整っているはずなのに、厚めの前髪と控えめな表情のせいで、印象はどうにも薄い。社交界では“地味令嬢”と呼ばれている少女――リシェル・エヴァンズである。
「リシェル・エヴァンズ」