あらすじ
「……支配してやる、と思っていた時期が俺にもありました」
かつて中学時代、俺はクラスの美少女・怜奈を「神に作られた人形」だと定義し、自作の設定ノート(聖典)にその歪な支配欲を書き殴っていた。
あの日、図書室の片隅で「君のすべてを支配してやる」と告げた俺に、彼女が真っ赤な顔で「……いいよ」と頷いた瞬間、俺の全能感は間違いなくピークに達した。
――だが、現実は残酷だった。
高校生になった俺を待っていたのは、鬼担任によるノートの没収と、全校生徒への「公開処刑」。
俺は尊厳のすべてを失い、誰も俺を知らない隣県の高校へと逃げるように転校した。
「さらば過去の俺。ここからは真っ白な新生活の始まりだ!」
だが、新天地の教室の扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、当然のような顔でそこに座る――「元・支配対象」の怜奈だった。
「遅かったわね、支配者くん。……続き、綴らなきゃダメでしょ?」
俺がシュレッダーにかけたはずのノートは、なぜか以前よりも重厚な装丁で彼女の手に握られていた。
逃げても、逃げても、世界が彼女を俺の元へと引き戻す。
これは、自称・支配者の哀れな少年が、自分を「檻」だと定義して離さない本物の狂気に支配されていく、歪な救済の物語。