あらすじ

駅裏の古びた雑居ビルの五階。 看板も出ていない「月白代筆室」には、ときどき不思議な依頼が舞い込む。 退職届に添える二行の詫び。葬儀のあとにしか読めない恋文。結婚式の前夜、元妻へ送る最後の招待状。 そこを訪れるのは、うまく泣けず、うまく謝れず、うまく愛せなかった大人たちばかりだ。 代筆室で働くのは、言葉で失敗して職を追われた元編集者・朝比奈 恒一。 観察眼は鋭いのに、自分の本音だけはうまく言えない。 そんな彼の上司は、穏やかな微笑みの奥に、誰にも出せなかった一通の手紙を隠している室長・雨宮しおり。 さらに近所のバー店主・御厨連まで巻き込みながら、朝比奈は依頼人たちの「本当に伝えたかった言葉」を探していく。 けれど、他人の想いを言葉にするたび、朝比奈自身の過去もまた暴かれていく。 かつて彼が書いた文章は、ある人の人生を壊した。 それでも人は、もう一度、誰かに言葉を届けていいのか。 これは、言えなかった一言に人生を奪われた大人たちが、 たった一通の手紙から自分を取り戻していく物語。 最後に朝比奈が綴るのは、誰かのための代筆か、それとも自分自身のための“初めての自筆”か。

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カクヨム
カクヨム2026/04/17
  • 現在の作品夜だけひらく代筆室