あらすじ
『祖母の新築を奪う義母へ――もう遅い、先に住んでます』
鍵は回らない
冬の玄関先で
声だけが先に入り込もうとする
「ここは私の家よ」
風が、それを押し返す
まだ新しい木の匂い
磨かれた床に残る光
そこにあるのは
奪う声ではなく
静かに積み上げた時間
「どちら様ですか」
その一言で
境界が引かれる
血でもなく
名義でもなく
選ばれた居場所
古い手が
若い手を握る
「私は、この子たちと暮らします」
その瞬間
家は完成する
外では
荷物と焦りが崩れていく
内では
湯気の立つ茶碗が並ぶ
奪えなかったものは
壁でも屋根でもなく
——帰る場所だった