あらすじ
「――昨日、誰かを殺したはずなのに、その記憶がない」
帝都の影で蔓延する奇病『グリム・シンドローム』。
それは、美しくも残酷な童話が現実を侵食し、人間を醜悪な化物へと作り替える絶望の変異だった。
主人公・春夏冬秋(しゅんか ふゆあき)は、白紙機関の猟師として、このバグを解体し続ける。
だが、物語を殺す代償は、彼自身の「存在」そのものだった。
ある時は「歩き方」を。
ある時は「涙の意味」を。
そしてある時は「妹を守る理由」を。
戦うたびに記憶と概念を削り取られ、ただ処理を行うだけの空っぽの「機構(システム)」へと成り果てていく冬秋。
そんな彼が傷だらけで帰る場所は、教会の地下。包帯に包まれた最愛の妹・秋冬(しゅんか しゅうとう)が待つ、真っ白な病室だけ。
「お兄ちゃん、今日も私に食べさせてくれる?」
彼女が甘い声で喰らうのは、冬秋が持ち帰った物語の残滓(絶望)か、あるいは兄の魂そのものか。
さらに日常の隣では、完璧な笑顔を浮かべるクラスメイト・有栖川結が「種」を撒き、悲劇の結末を無邪気に強要し続ける。
これは、救済を騙る加害の記録。
戦う理由を失い、感情を喰われ、自分がただの「餌の運搬経路」だと気づいても、それでも決して繋いだ手を離せない――。
理由なき執着だけが稼働し続ける硝子細工の箱庭で繰り広げられる、美しくも悍ましい「捕食」と「共依存」のダークファンタジー。