あらすじ
王国軍で雑用係と呼ばれていた青年レインは、戦場で目立つ男ではなかった。
剣で敵を倒すわけでも、派手な魔法を使うわけでもない。
彼が見ていたのは、残った兵糧、動ける馬、壊れた荷車、帳簿と現物のずれ。負けた軍が、どうすれば全滅せずに帰れるか。それだけだった。
ルーデン平原の敗戦後、レインは撤退の混乱を整理し、多くの兵を生かす。
だが上層部が欲しがったのは、正しい報告ではなく責任を押しつける相手だった。
補給混乱の罪を着せられたレインは、北東のハルヴェイン辺境領へ送られる。
そこは、街道が壊れ、倉庫は空に近く、兵は減り、役所の帳簿だけが太った、見捨てられた土地だった。
それでもレインは言う。
「まだ死んでいません」
足りないものを数え、無駄な支出を止め、残すべき人を残す。
倉庫、税、兵、街道、商人。ばらばらに見えた問題を一つずつ繋ぎ直すうち、崩れかけた辺境は少しずつ息を吹き返していく。
一方、レインを追い出した王都では、彼が担っていた仕事の重さに、誰も気づいていなかった。
これは、敗戦の後始末を押しつけられた雑用係が、崩壊寸前の辺境領を立て直していく物語。