あらすじ

大学受験に失敗し、周囲が「次」の一歩を踏み出す中で独り取り残された浪人生・浅葱碧唯(あさぎ あおい)。劣等感と喪失感に苛まれる彼は、母の提案で、都会から遠く離れた離島「根大島(ねだいじま)」へと渡ることになる。そこは、突き抜けるような青空と、エメラルドグリーンの海、そして深い原生林が共存する、時間が止まったかのような美しい場所だった。 下宿先である月見里凪彩(やまなし なぎさ)の家で碧唯を待っていたのは、内気で心を閉ざした少女・海夏(ミカ)との出会い。そして、余所者の碧唯を「家族」のように迎え入れてくれる、お節介で温かい島の仲間たちだった。 港で声をかけてくる陽気な漁師の老人、唯一の商店を守り続けるおばあちゃん、そして島に一つしかない学校で、限られた青春を謳歌する学生たち。都会では決して味わえなかった、泥臭くも温かな人間模様に触れるうち、碧唯の心に張り付いていた冷たい風は、少しずつ凪いでいく。 しかし、その穏やかな日常の裏側には、島が抱える切ない記憶が隠されていた。 碧唯の夢に現れる、白い花が咲き乱れる野原と、孤独に一本立つ大きな桜。そこで銀髪を揺らしながら、震える声で誰かの名前を呼び続ける正体不明の少女。彼女が求めているのは、救いか、それとも――。 浪人生という「空白の一年」を埋めるのは、単語帳の文字ではなく、島で出会った人々との絆だった。共に食卓を囲み、共に海を見つめ、島特有のゆったりとした時間の中で、碧唯は次第に「自分の居場所」を見つけ出していく。だが、夢の中の少女と月見里家が隠し持つ秘密が交錯する時、物語は静かに、けれど激しく動き始める。 「ハルが過ぎ去ったあとの世界で、僕たちは、もう一度笑えるだろうか」 失われた「ハル」の跡を辿るように、根大島で紡がれる最初で最後の一年。 これは、居場所を失った少年と、愛する人を待ち続ける島の人々が、再び自分たちの「色」を見つけるまでの、切なくも温かい再生の物語。

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小説を読もう2026/04/16
  • 現在の作品アオとハルが過ぎ去った夢