あらすじ
この国では「悪役令嬢」は国家公認の職業だ。聖女物語を完成させるため、五年任期の特別公務員として、貴族令嬢の中から任命される。任期五年、年俸は宰相と同等、辞令は国王直筆。──私はその四代目、ロティス・フォン・エヴァガルド。
任期最後の夜、勇者役の彼が私の部屋に来て、膝をついた。
「明日、君を斬りたくない」
翌朝、私は辞令を返上した。三年前から書きかけのまま引き出しに眠らせていた辞職届に、五年ぶりに、自分の名前を、自分のために書いた。
辺境の村で養蜂を始めた私の元に、やがて王都からの使者と、隣国の大使と、殺される予定だった十六歳の後任が、次々と訪れる。私が五年間、嫌々演じていたものの正体を、たった一人、ずっと見ていた青年がいたらしい。