あらすじ

黛杏(まゆずみあん)、陶芸家。健康診断を十年受けていない。毎晩飲む。肝臓の数値は驚異的に正常で、担当医が首を傾げる。  柊茜(ひいらぎあかね)、製薬会社研究員。サプリを五種類並べ、睡眠スコアを毎朝記録する。胃が弱い。ピロリ菌は除菌したのに、まだ痛む。  タワーマンションの三十二階で、同棲八百七十二日目。  杏は、十七歳のとき、健診で病を知った母が「知ったその日から」少しずつ変わっていくのを見ていた。茜は、十五歳のとき、健診を受けなかった父を、ある朝、突然失った。 「知ること」を恐れる女と、「知らないこと」を恐れる女。  ベランダの夜景の下、二人は今夜も飲んでいる。茜の胃は今日も痛み、杏のグラスは今夜も空く。やがて訪れる、家族と呼ばれない夜と、二人で開ける一通の封筒。  これは〇・三度の体温差を、毎晩確かめ合う物語。

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カクヨム2026/04/15
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