あらすじ
ある私立高校の屋上には、特定の悩みを抱えた者にしか見えない「真夜中の遊園地」が出現するという噂があった。そこは、支配人の謎めいた少女が、どんな望みも瞬時に叶えてくれる場所。しかし、その甘い誘惑には、誰にも言えない恐ろしいルールが隠されていた。
物語の中盤、生徒たちは「少しでも楽になりたい」という切実な思いから、次々と遊園地の門を潜る。勉強が苦手な少年シュンは「頭が良くなりたい」と願い、一瞬で全問正解の知能を手に入れるが、その代償として「未知に挑むワクワク感」や「考える楽しさ」を完全に失い、脳内が正解だけの砂漠と化してしまう。また、眠る時間を惜しんでゲームに没頭したいタクミは「ずっと起きていたい」と願い、不眠の体を手に入れるが、精神の休息地である「夢」を見る権利を剥奪され、終わりのない現実に精神を病んでいく。
さらに、いじめから逃れるために「透明になりたい」と願った少女は、悪意から守られる代わりに誰からも認識されない幽霊のような存在になり、忙しさに追われる少年が願った「時間を止めたい」という望みは、彼自身の人生を永遠の静止の中に閉じ込めてしまう。
願いが叶うたびに、生徒たちからは人間としての「感情の機微」や「生の熱量」が少しずつ削り取られていく。物語は単なるホラーを超え、支配人の少女が告げる残酷な真実へと辿り着く。
「他人の力で叶えるものは、魂の宿らない単なる『願い』に過ぎない。自らの力で泥を啜りながら掴み取るからこそ、それは『夢』と呼べるのだ」
結局、自分の力で頑張ることを放棄した者たちは、手に入れたはずの「成功」という名の檻の中で、空虚な余生を送ることになる。遊園地は彼らの「過程」を食いつぶし、現実世界をも侵食し始める。最後に残るのは、自分で足掻くことの尊さを失った、剥製のような少年少女たちの姿だった。