あらすじ
中学三年の水谷俊太は、ある放課後に担任の木村先生が一人で校区内を歩き回っているのを偶然目撃する。
雨の日も、風の日も、毎日欠かさず歩き続ける先生。不思議に思って声をかけると、先生は静かにこう答えた。
「どこが怖いのか、歩いてみないとわからないから」
クラスには、二学期が始まってから一度も登校していない鈴木がいた。俊太は気づいていた。でも、関係ないと思っていた。
先生と並んで歩くうちに、俊太は少しずつ知っていく。先生が毎日歩く本当の理由を。
来られない子どもたちの通学路を、季節が変わるたびに自分の足で確かめ続けてきた、その長い年月を。
そして——一人だけ、戻ってこなかった子のことを。
歩くことしかできない、不器用な先生の愛情。
見ていたのに、見ていなかった自分への気づき。
一万歩の道の先に、俊太が見つけたものとは。