あらすじ
「死者に“選択させること”の残酷さと優しさを描いた物語」
死後の世界へ向かう途中、「死出の山」を越えた魂たちは、必ず迷う。
その途中に現れる小さな喫茶店では、“生きていない客”に食事が提供される。
そこで働くことになった泉守澪は、先輩から一つのルールを教えられる。
それは——「介入は禁止。選ばせること」
客は食事を口にすることで、未練や迷いを和らげ、先へ進む。
しかしそれは同時に、“戻らない”ことを意味していた。
疲れ果てたサラリーマン、子どもを気にかける母親、無邪気に食べる子ども、
そして食事を拒み、抗おうとする者——
様々な亡者と向き合う中で、澪は次第に葛藤する。
「食べさせれば楽になる」
だがそれは、本当にその人の選択なのか。
拒否した子どもが“別の苦しみの道”を進む姿を見たことで、
澪の中でその迷いはより深くなる。
それでも店の役割は変わらない。
選ばせ、進ませること。
やがて役目を終えた澪は、メイドとしての役割を脱ぎ捨て、
次の段階——道を示す案内人へと移る。
彼女はもう与えない。
ただ、分岐の前に立ち、進む方向を示す存在となる。
その心にはなお、
「楽に進ませることは優しさなのか」という問いが残り続けていた。