あらすじ

嫁は無料の家政婦ではありません

~時給0円の主婦が、家庭というブラック企業を退職するまで~

朝五時
まだ夢の中にいたはずの体を引き剥がして
キッチンに立つ

誰も気づかない音で
一日が始まる

弁当を詰めて
洗濯機を回して
昨日の「当たり前」を今日も繰り返す

「ありがとう」は、ない

あるのは
脱ぎ捨てられた靴下と
「誰の金で食ってると思ってる?」の一言

——私は、誰のために生きているんだろう

熱があっても
休みはない
代わりもいない

それでも
「家事は楽でいいよな」と笑われる

見えない仕事
名もない労働
終わりのない責任

それら全部を抱えて
私は今日も、ゼロ円だった

ある日
数字にしてみた

掃除、洗濯、料理、管理、気遣い
ひとつずつ積み上げていくと

私の一ヶ月は
誰よりも高かった

その紙を差し出したとき
あなたは笑った

破り捨てた

その瞬間
私の中で、何かが終わった

静かに
確実に

私は、やめることにした

全部を一気にじゃない
少しずつ
手を放していく

あなたが見ていなかった仕事を
あなたの前に置いていく

溜まるゴミ
しわだらけのシャツ
崩れていく日常

それが
「私の代わり」

「女のくせに」と言われても
「妻なんだから」と責められても

私はもう
戻らない

だって知ってしまったから

私は
“無料の誰か”じゃない

やがて
一枚の紙を置く

離婚届と
業務終了の宣言

未払いの報酬は請求しない
その代わり

——私を、返してもらう

ドアを閉めた瞬間
空気が変わる

こんなにも世界は
静かだったのかと思う

一年後

私は私の時間で生きている

朝は、好きな時間に起きて
コーヒーは、自分のために淹れる

誰にも奪われない時間が
こんなにもあたたかいなんて

あなたが言う
「やり直したい」と

でも、ごめんなさい

私はもう
誰かの“都合のいい存在”には戻らない

だって私は知っている

私の価値は
ゼロ円なんかじゃない

そして今日も
私は、自分の人生に出勤する

もう二度と
無給では働かないために

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アルファポリス
アルファポリス2026/04/15
  • 現在の作品嫁は無料の家政婦ではありません 〜時給0円の主婦が、家庭というブラック企業を退職するまで〜