あらすじ
夕暮れの公園、大学生の日向には、密かな楽しみがあった。
それは、大きな柴犬を連れて散歩にやってくる「眼鏡の男性」に会うこと。
柴犬が日向に懐いているおかげで、わずかに交わされる挨拶と視線。
名前も知らない、連絡先も知らない。
けれど日向にとって、犬が引くリードの先にいる「彼」との時間は、何物にも代えがたい大切な日常になっていた。
しかし、季節が移ろい日が短くなった頃
いつものベンチに座る彼はひとりだった。
足元に、あの賑やかな温もりはない。
失われたリード。消えてしまった口実。
繋がりを失ったはずの二人の、「散歩」の続きが今始まる───。