あらすじ
眠れない夜が、怖かった。
静かなはずなのに、頭の中だけがうるさい。
逃げ場のない時間の中で、ただ朝を待つことしかできなかった。
そんなある夜、私はふと気づく。
この感覚に「名前」をつければ、少しだけ楽になるのではないかと。
——「空っぽの夜」
——「息が浅い夜」
——「閉じ込める夜」
言葉を与えるたびに、曖昧だった夜は形を持ち、
やがて“扱えるもの”へと変わっていく。
だがそれは、救いではなかった。
夜に名前をつけるたびに、現実は少しずつ歪み、
やがて昼にも侵食し始める。
感情よりも言葉が優先され、
本来の自分の感覚は、ゆっくりと消えていく。
気づいたときには——
自分の名前すら、思い出せなくなっていた。
それでも、夜は来る。
眠れないまま。
名前をつけることもなくなったその先で、
ただひとつ確かなのは、
——この夜だけが、ここにあるということ。
眠れない夜に、名前をつける。
それは、本当に“自分を救う行為”だったのか。
静かな崩壊を描く、共感型心理ホラー。