あらすじ
1990年。世間は空前のトレンディドラマブームに沸き、一方で「オタク=犯罪者予備軍」という冷酷なバッシングの嵐が吹き荒れていた時代。
陸上部でそれなりに輝いていた中学生・伊沢の日常は、廊下で女子生徒から放たれた「キショ!」というたった一言の致死毒で、完全に崩壊した。
逃げるように自室の六畳間に引きこもり、親と殴り合い、誰からも干渉されない「絶対防衛線」を手に入れたはずだった。
自分の青春は、もうここで終わった。
そう絶望しきっていた伊沢の隔離病棟に、ある日、圧倒的な『陽』のオーラを纏ったクラスメイト・倉田がやってくる。
哀れむような同情も、大人のような説教も、休んだ分のプリントすら持たず。
ただ、完全なる「手ぶら」で。
「久しぶりやな! どないしてんの?」
彼らという『UR(ウルトラレア)級』の劇薬によって、伊沢の止まっていた時計の針が再び狂ったように動き出す。
勘違いの恋、連鎖する玉砕、ヤンキーからの理不尽なエール、そして四則演算ができれば受かる底辺高校への進学……。
本作は、現在連載中の『New Season!If 』シリーズへと繋がる、主人公・伊沢の【エピソード・ゼロ】。
泥水のような現実を啜りながら、それでも必死にもがき、笑い、駆け抜けた。
不器用で、滑稽で、どうしようもなく愛おしい「1990年の青春」の全記録。
絶望の六畳間から這い上がった少年の、泥臭き再生の物語。