あらすじ
「時速一キロで歩くと、世界は驚くほど饒舌になる。」
残業帰りの午前二時、疲れ果てた私がネットオークションで見つけたのは、『今年の桜前線の、先頭を歩ける権利』だった。落札価格は、わずか一円。出品者の条件はただ一つ。「時速一キロで歩ける方のみ、ご入札ください」という奇妙なものだった。
半信半疑のまま沖縄へと向かった私を待っていたのは、潮風に吹かれたタキシード姿の老人と、魔法のように静かで、どこまでも遅い北上の旅。
分刻みのスケジュールに追われる日常を捨て、あまりにゆっくりと進む桜前線を追いかける中で、私はこれまで「速さ」の犠牲にして見落としてきた世界の姿に気づいていく。
旅の終着点、満開の桜の下で老人が差し出した「銀色の手鏡」。
そこに映し出されたもの、そしてこの旅の本当の対価とは――。
自分を見失い、立ち止まり方を忘れてしまったすべての人に贈る、不思議で優しい春の物語。
※表紙画像:フリー画像サイト「ぱくたそ」より引用
https://www.pakutaso.com/20140306069post-3918.html