あらすじ
「私の世界からは、いつからか音が消えてしまった。けれどそれは、神様が私にくれた、唯一の優しい罰だったのだと思う」
魔力が「音楽」となる世界で、名門レゾナンス家の令嬢アリアは、音が聞こえない『無音令嬢』として蔑まれていた。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった。それは、前世で「音楽の神童」として、期待という名の不協和音に心を壊された記憶――。
二度と音に怯えぬよう、自ら「銀色の繭」に閉じこもった彼女の前に、数年ぶりに再会した兄ユリアンが現れる。
静寂を分かち合う騎士。不完全な音の楽しさを教える友人。
それぞれが奏でる異なる音色に触れ、アリアの凍りついた『無音』の世界は、紫色の霧と共に色鮮やかに溶け出していく。
これは、自分を縛り付けていた完璧な一音を捨て、大切な人たちと紡ぐ不完全な共鳴を聴き、再び自分だけの「アリア」を紡ぎ出すまでの、切なくも美しい再生の物語。