あらすじ
かつて、世界は救われた。
勇者は魔王を屠り、女神は人々に「永遠の安らぎ(不老不死)」を約束した。
――それが、すべての終わりだった。
百年後。
世界を覆っているのは、枯れることのない膿の海と、死を忘れて腐り続ける「かつて人間だったもの」たちの呻きだ。
空には巨大な胎児の月が浮かび、地上には、神が流した汚濁(しあわせ)が満ち溢れている。
主人公は、ただ一人「眠り」を奪われた老いた騎士。
彼は、もはや誰にも届かない祈りを捧げながら、かつての戦友や、縋り付く子供たちの喉を、慈しみを持って切り裂いて歩く。
この狂った理(ことわり)の中で、唯一の「愛」とは、命を終わらせてやることだけだから。
これは、強くなるための旅ではない。
これは、何かを得るための冒険ではない。
ただ、正しく滅びるために。
美しく、残酷な因果の螺旋を、自らの手で断ち切るための巡礼である。
「――あなたは、この結末を許せますか?」